熊本の弁護士トップ > 中小企業コラム 第1回  「中小企業に特有の問題とは」

第1回  中小企業に特有の問題とは

全国の企業のうち99%以上は中小企業だそうです(※総務省の「経済センサス」調査による)。
つまり、世の中の社長様の99%は、中小企業経営者として概ね共通した問題を抱えておられるのだろうと思われます。
中小企業特有の問題とはどのようなものでしょうか。
大きくいくつのカテゴリーに分けて整理してみましょう。


①組織の整備運用上の問題
個人事業から法人成りした会社が多く、また個人商店の意識が抜け切れていないケースが非常に多く見られます。

社長様が「うちの会社はみんな仲がいいから問題は起きない」と言って就業規則や労働条件の整備を怠るケースは少なくありません。中には、従業員10名近い会社なのに、いわゆる「36(サブロク)協定」(労基法36条協定)すら届け出ていないケースもありました。
36協定を締結して労働基準監督署(労基署)に届け出なければ、1日8時間・週40時間以上の労働をさせることができず、残業や休日出勤をさせることができません。36協定を届け出ずに残業をさせると罰則の適用があります。

また、株式会社(もとの有限会社も株式会社に含まれます)では「株主名簿」の作成が義務づけられていますが、中小企業で株主名簿がきちんと作られているケースはむしろ少ないのではないでしょうか。多くの会社は、定款上の出資者の記載と、相続税の申告書等に添付される税理士作成の株式所有一覧表で代替しているようです。しかし、株主名簿を作成しないと、株式譲渡や相続がなされた場合などに株主としての権利を行使できる者が誰か分からなくなりかねませんし、株主総会の招集通知を送付する相手も確定できません。

このように基本的な組織基盤の整備や運用がなされていないケースが多く、それが労務問題等の様々な問題につながっていきます。
このような問題を解決するためには、弁護士や社会保険労務士等の専門家による支援が重要です。


②事業承継の問題
中小企業はオーナー社長やその親族が株式の大半を所有しているケースが多く、相続によって事業が承継される場合が大半です。

しかし、株式が複数の相続人に分散されることで、会社の支配権が不安定になってしまいます。
早期に後継者を選定して、その方に株式が集中するように遺言書を作成しておくなど、事業の確実な承継のため、長期的視野に立った対応が必須です。


③交渉力の問題
中小企業は経営規模が小さいことから、どうしても交渉力が劣りがちです。例えば、取引先や元請け業者から不利な契約条項を押し付けられるようなことが散見されます。

また、個人顧客からのクレームで不当な値引きに応じてしまうこともよくあります。社員の方が苦労して1円ずつ積み上げてきた利益を、不当なクレームに屈して吹き飛ばしてしまうようでは、会社の経営は安定しませんし、社員の忠誠心も揺らいでしまいます。

もちろん、ある程度は柔軟な対応が必要な場合もありますが、取引先等が優越的地位を濫用して不当な圧力を掛けてきたり、継続して続いてきた取引を突然打ち切ったりするようなことがあれば、迅速に法的対応を取らなければなりません。
クレームや値引き要求に対しても、毅然とした対応が必要ですし、弁護士の名前を出すだけで解決するケースも多々あります。


④経営体力の問題
中小企業は大企業と違い、一度のトラブルで致命的なダメージを受けかねません。ですから、トラブルの発生を防ぐ「予防法務」が極めて重要です。例えば顧問弁護士を活用することで、トラブルが発生しないような組織運用の整備を行ったり、債権が時効によって消滅したりすることの無いように債権管理を行ったり、あるいは債権回収を適切に行ったりという対応が可能になります。

また、仮にトラブルが発生しても、早期に解決すれば深刻なダメージを回避することが可能です。病気と同じで、問題を悪化させて症状をこじらせてからでは予後は良くありません。
このように、中小企業は経営体力のバッファが少ないですから、トラブルの予防と、もし発生した場合の早期解決に力を入れなければなりません。


中小企業特有の問題を述べてきましたが、もちろん、逆に中小企業だからこその強みもあります。

その最たるものはやはり「リーダーシップの強さ=素早い意思決定と、強力な実行力」です。

中小企業だからこそ、強力なリーダーシップのもと、迅速かつ強力な経営を行っていくことが可能なのです。
また、規模が小さいからこそ、社員の仲が良く、一致団結して業務に当たることができるのも強みです。

中小企業の弱さを克服し、その強みを最大限に発揮することが、中小企業を強くするための最大のポイントなのです。

次回から、中小企業経営上の法的問題についてお話ししていきたいと思います。

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